地域のボランティア活動は「タダ」でないといけないのか?
ボランティアといえば、善意のもと無償で行う活動ですが、近年では有償ボランティアという形が広まってきたそうです。それが浸透した背景には、有償ボランティアのほうが活動を持続させ、
シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんによると、有償ボランティアはコミュニティビジネスの最初の段階であり、長年の経験や知恵のあるシニア世代こそがこの活動に向いているのだとか。市民活動のあり方について一緒に考えてみましょう!
あなたのボランティアは無償? 有償?
市民活動、特にリタイア世代の地域活動といえば、以前は無報酬型のボランティアがほとんどでした。しかし、今では、有償ボランティアという形も盛んに取られるようになりました。
なぜ有償ボランティアが広がってきたのでしょうか。それは、ボランティアは単なる奉仕ではなく、必要な経費や人材を確保して、持続可能で成果の見える活動を行う必要があると考えるようになったからです。
無償も有償も基本は善意であり、社会貢献ですが、無償の場合は、「やってあげる」という姿勢になりがちです。そこで、都合が悪くなった、ちょっと疲れたというような理由で、気軽に止めてしまう人も出てきます。善意でやってあげているのだから許してね、というスタンスです。しかし、受ける側にとってみれば、それは困ったことかもしれません。
さらに、無償でやってくださる方に、要望やお願いを言いにくいという思いもあります。であれば、お金を払ってもいいから、きちんとやってほしいと考える人もいるのです。
もちろん、無償であっても、私はきちんとやっています!という方もいるでしょう。では、あなたがいなくなった時、その活動を今と変わらず続けていくことはできますか。
無償ボランティアを否定するのではありません。無償でしかできないことはたくさんあります。ただ、この活動は無償と有償のどっちで行うのがいいのか、活動する場合は、それをまず考える必要があるということです。
最初は無償で行って、活動が軌道に乗ったら料金をいただく仕組みに変えればいいと考えがちですが、一度、無料にしてしまったら、それはほとんど不可能です。費用を負担できる人にはきちんと出してもらって、安定した活動を行い、負担していただいた以上のものを提供しよう考えることも間違いなくボランティアなのです。
周りの人も自分も幸せになるビジネス
さて、1円でもお金をいただいて行う活動はもう立派なコミュニティビジネス(CB)です。
今まで自治体が取り組んでいた福祉、教育、文化、環境保護などの住民サービスは、もはや行政だけでは手が回らなくなりました。そこで、能力と経験と知恵のある市民がその部分を担うことは普通のことになってきています。
CBはそうした仕事を手掛け、報酬を得ることのできる地域密着型事業です。この事業はリタイアして地域で暮らし、時間のあるシニア世代にはぴったりな活動といえます。
しかし、だからといって、現役時代のように必死で働くものでもありません。自分の住んでいる地域の特徴や長所、問題点を知って、その中で関心のあること、やりたいことを活動にし、「周りの人も自分も幸せにするビジネス」です。決して無理はしない、シニアならではの「ゆるやか起業」ともいえます。
その代表的な例が「NPO(特定非営利活動)法人」です。会社と違って、資本金は必要ないので、今では全国に5万ほどのNPO法人があり、シニア世代が中心のものも少なくありません。
また、市民活動や起業をさらに後押しするために、国が新たに作った組織体系に「一般社団法人」があります。NPO法人は居住地のある都道府県に申請したうえで、審査を受けて認証を得る必要がありますが、一般社団法人は登記をすれば活動を始めることができます。
「法人なんて、なんだか荷が重い」という人もいるでしょう。そんな人たちは「ワーカーズコープ」という方法を取ることがあります。例えば、仲間が5人いたとして、一人が2万円出せば、合計10万円。まず、これを原資にして活動を始めるのです。
このような市民活動に、市民の力を必要としている自治体が関心を持ち、協力を呼びかけることで、行政と市民グループとの協働事業も始まっています。シニア世代のCBには、経験豊富なシニアらしいユニークな活動も生まれています。次回からは、そうしたCBの具体例を紹介していくことにしましょう。
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